暮しに寄り添う間取り

たとえば、水は流れやすい方向に流れ、風は抜けやすい方向に抜けていきます。その流れに負荷をかければ、水にしろ、風にしろ、そこには溜まりがつくられます。しかし、その溜まりを次の流れに上手につなげていけば、その溜まりは心地よい小休止の場となります。間取りづくりとは、風の流れ、人の動き、視線の抜け、光の入り方などの流れと、溜まり=「場」について考えることであり、様々な流れをスムーズにするような「場」のつながりをつくることで、暮らしに寄り添う「間取り」となります。

◆ 風の流れる間取り・・・「久が原の家Ⅱ」
食堂のソファーベンチの先には坪庭がつくられており、さらに、その坪庭から和室そして南側テラスへと、内—外—内—外の関係でつながっています。この位置に坪庭を作ることで、伸びやかな視線軸がつくられると共に、南北を流れる風の道がつくられます。

居間に面した南テラスから流れ込む風、和室の出入口を通過して入り込む風、そして坪庭からの風、居間は風道の十字路になっています。

居間に流れ込んだ風は、居間から食堂そしてキッチンへと流れ、さらに写真中央丸柱左側の階段室、そして、その左脇の廊下へと、風は合流や分岐をしながら緩やかに流れていきます。

和室はテラスと坪庭に挟まれており、窓を開けることで、外と一体の空気感に包まれます。さらに、離れ座敷と言った落ち着き感も生まれました。

◆ スムーズな生活動線・・・「国立の家」
たとえば来客時など、2階の個室(寝室・子供部屋)から入浴や洗面のために降りてきた際、居間食堂スペースを通らずに洗面浴室へと進むことができます。また、写真左側の廊下は、和室から洗面浴室さらにトイレへの裏動線になっていますので、その和室に寝泊まりしている人が、人目に触れずサニタリースペースへと移動できます。

和室と居間との動線をつくることで、居間とつながる次の間としても使えますし、または客人の宿泊スペース、さらには将来の寝室としても使うことができます。

③ 玄関ホールからは二つの動線が選択できます。一つは居間へ、もう一つが、玄関から直接パントリーを抜け、キッチン、そして食堂へと進むルートになっています。玄関ホールとパントリーの間は、その時々の使い勝手に合わせて引き戸で開け閉めができます。

④ 居間の奥を抜けると、2階への階段、そしてサニタリースペースへと進むことができ、そのまま裏動線(①)で和室に抜けることも可能です。また、2階の吹抜け部分に面して子供室を配置することで、1階にいながらも気配を感じることができます。

◆ 奥行き感を作る視線の抜け・・・「喜多見の家」
玄関に入るとその正面に、北庭(坪庭)の緑が目に入ります。単なる動線空間になりがちな玄関ホール兼廊下に、潤いを得ることができます。窓の構成は、植栽の緑を美しく見せるために上部をはめ殺しの窓とし、下部を通風ができる窓としています。

北庭の緑に近づきつつ玄関ホールから居間に入ると、南庭の緑が対角線の視線軸の先に見えます。そのことで奥行きを感じることができ、居間食堂の空間にゆとりとのびやかさが得られます。

居間食堂は北庭の存在も意識できるようになっており、南庭と北庭に挟まれることで、緑に包まれた居室になっています。また、写真奥の北庭の見えるところには、玄関ホールと居間を仕切る引き戸が壁から出てきますので、落ち着いた空間とすることや、冬場など玄関ホールからの冷気を遮ることも可能です。

洗面室から浴室を抜け、北庭の緑を眺めることができる視線軸を意識してつくることで、建物の北側に配置されたサニタリースペースが、悠々とした空間となりました。

◆ 日差しを入れ込む・・・「大倉山の家」
階段室上のトップライトから射し込む日差しは、朝から夕方に掛けてその位置を刻一刻と移動させ、階段の両サイドにある居間と食堂に落ちていきます。

北側に面した居間ですが、柔らかな明るさに包まれた階段室とつながることで、落ち着きを持った居室になりました。

階段室のトップライトから南の日差しを誘い込み、写真中央に見える階段上部の窓からは、北の柔らかな安定した明るさを取り入れています。

階段室は食堂と居間に挟まれており、その階段室から落ちてくる明るさによって、両スペースが緩やかにつながります。


暮しに寄り添う間取りというのは、暮らす家族によって、全く異なります。

だからこそ、その家族にとって“愛着のある間取り”になればと思っています。