たとえば、水は流れやすい方向に流れ、風は抜けやすい方向に抜けていきます。その流れに負荷をかければ、水にしろ、風にしろ、そこには溜まりがつくられます。しかし、その溜まりを次の流れに上手につなげていけば、その溜まりは心地よい小休止の場となります。間取りづくりとは、風の流れ、人の動き、視線の抜け、光の入り方などの流れと、溜まり=「場」について考えることであり、様々な流れをスムーズにするような「場」のつながりをつくることで、暮らしに寄り添う「間取り」となります。
① 食堂のソファーベンチの先には坪庭がつくられており、さらに、その坪庭から和室そして南側テラスへと、内—外—内—外の関係でつながっています。この位置に坪庭を作ることで、伸びやかな視線軸がつくられると共に、南北を流れる風の道がつくられます。


① たとえば来客時など、2階の個室(寝室・子供部屋)から入浴や洗面のために降りてきた際、居間食堂スペースを通らずに洗面浴室へと進むことができます。また、写真左側の廊下は、和室から洗面浴室さらにトイレへの裏動線になっていますので、その和室に寝泊まりしている人が、人目に触れずサニタリースペースへと移動できます。


③ 玄関ホールからは二つの動線が選択できます。一つは居間へ、もう一つが、玄関から直接パントリーを抜け、キッチン、そして食堂へと進むルートになっています。玄関ホールとパントリーの間は、その時々の使い勝手に合わせて引き戸で開け閉めができます。
① 玄関に入るとその正面に、北庭(坪庭)の緑が目に入ります。単なる動線空間になりがちな玄関ホール兼廊下に、潤いを得ることができます。窓の構成は、植栽の緑を美しく見せるために上部をはめ殺しの窓とし、下部を通風ができる窓としています。


③ 居間食堂は北庭の存在も意識できるようになっており、南庭と北庭に挟まれることで、緑に包まれた居室になっています。また、写真奥の北庭の見えるところには、玄関ホールと居間を仕切る引き戸が壁から出てきますので、落ち着いた空間とすることや、冬場など玄関ホールからの冷気を遮ることも可能です。
① 階段室上のトップライトから射し込む日差しは、朝から夕方に掛けてその位置を刻一刻と移動させ、階段の両サイドにある居間と食堂に落ちていきます。


暮しに寄り添う間取りというのは、暮らす家族によって、全く異なります。
だからこそ、その家族にとって“愛着のある間取り”になればと思っています。